セリフを「読む」ことから脱却する-「言う」意識育成法

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最近、レッスン含め色々なことに気付けたので、その気付き、そして教えていただいた練習法などをこちらでまとめます。

今回はセリフをいかに「読まず」に「しゃべる」かということにフォーカスしています。


専門学校や養成所の多くの人が「上手く読む」練習をしてきた

私も始めにレッスンを受けて、まず言われたのが「これまで上手く読むためだけの練習をしてきた」ということ。

とちらないように、噛まずに、しっかりとした発声を意識し、周りに迷惑をかけないように「読む」。

その上手く読むということは、活きたセリフ、「しゃべる」ということとはまた違います。

どこの事務所も原稿をただ上手く、雰囲気だけで読める人は要りません。

 

専門学校や養成所で「事務所のマネジメント対象となる合格を得た」時点で、その山の頂上には達しています。

すなわち、そこからどれだけ頑張ろうとも、第一線で活躍しているプロ達に追いつくことは出来ません。

プロ達が活躍しているその「山」はこれまで登って来た山とは全く別の場所にあるからです。

 

私たちが普段行っている「話す」ことと、原稿を「読む」ことの決定的な違いは何か

私たちが普段話すときには、そのプロセスとして、単語を頭の中で精査して、自分自身でまずその単語を認識してから、それを声に出して伝えています。

(心情や周りの状況によっては違う場合もあります)

そしてその単語が連続して繋がることで、結果として1つの文章になっているのです。

 

ところが、台本などには始めから、文章が完成された形で記載されています。

そのため、これまでのレッスンで習った「立てる所」「滑舌」「発声」「語尾をしっかり落とす」「距離感」「誰に話しているのか」など、「読むためのスイッチ」が入ってしまい、それに従って読んでしまいます。

そうなると、私たちが普段行っている単語への認識が薄れ、滑舌や立てるところ以外の単語がからっぽになってしまい、「セリフが入ってこない」のです。

演じるときに「極端に声が変わる」かつ「音の幅を狭い範囲でしか使えていない」人は大体、この状態になっていると言えます。

普段話しているときはもっと、音も動いているし、そこから色々な感情の流れが汲み取れるはずなのに。

そして、ここで記事を書いている私自身も専門学校を卒業した結果「完全に上手く読むことしか出来ない」タイプの人間になっていました。

 

「もっと出して」「何を考えて読んでるの」と言われ、どうしていいか分からない

「読むだけの人」は養成所や専門学校時代を経て、事務所でマネジメント対象となれても今度はその「読むスイッチ」が邪魔して、レッスンやワークショップなどで様々な人からこんな事を言われ、悩むことになります。

  • もっと出してくれないと何も言えない。
  • このセリフの意味、分かってる?どういった気持ちで読んだの?
  • 役の心情が全く見えない、何考えてるか分からない。
  • 先が見えているように感じる。その瞬間に対する反応が出来ていない。
  • 全部同じように読んでるから、今度は別のパターンで欲しい。

レッスンに来ると大体の講師の方が「もう養成所生じゃないんだから、習いに来ないで。ちゃんと毎回自分から何か持ってきてそれを出して」といったことを仰いますが、そもそも読むだけの人はそこから一歩も進むことは出来ません。

そのために、何をすればいいのか、そのやり方自体をそもそも知らないからです。

ですから、毎回同じようなダメ出しを受け、ひたすら「出して」「出して」と言われます。

やる気はあってもどうしていいか分からないため、結局不完全燃焼のまま次のレッスン、オーディションを向かえることになってしまうのです。

 

セリフを「話す」ことへの第一歩は「単語の認識」と「主張」

そこから脱するためにはまず単語を「言う」ことが出来るようにならなければなりません。

単語を言えるようになれば、技術的な事意外は全て、自然と解決します。

  • 立てるべき単語、主張すべき場所が見えてくる
  • 主張すべき場所が分かれば「主張しない、出さなくていい場所」が見えてくる
  • 自然と感情が芽生えてきて、そのシーンにおける1つの道筋、「プラン」が見えてくる
  • 音が自由に動き、相手に自分のやりたいことがしっかりと伝わる
  • 単語を全て言っているので、相手に聴く気がなくても内容が入ってくる
  • 距離感やかけるべき相手を意識しなくても勝手に会話になる
  • 役として、「その瞬間を生きる」ことが出来るようになる
  • どれだけ文章が続いても、単語の連続でしかないので、長文でも安定する

こうなるために。

先ほど書いた、話すときと同じく、文章の中の単語を意識し、全ての単語を言うことから全ては始まります。

「主張しない」「出さない」ということは後から削ればいいので、まずは言うこと。

そして、相手に対してしっかりと「主張」をすれば、自分の意図、役としての立ち位置は自然と伝わります。

それに単語を言うことに集中すれば、先のことを読む余裕もなくなり、その瞬間を役として生きることができます。

単語の1つ1つに対して、意図やニュアンスを「入れる」ことができます。

 

こうなれば上記のことは意識して「やる」必要はありません。

勝手に、自然と、そう「なる」のです。

 

私が毎日行っている「単語を言う」「音を動かす」ためのトレーニング方法

ここで、私がレッスンの講師から教わり、毎日行っているトレーニング方法を紹介します。

これはその講師自身が、立木さんはじめ大沢事務所で多くのベテラン声優の指導を行っている「師匠」に教えていただいものです。

実際にその講師の方から、教わる前と教わってから1年半後に録った音声をそれぞれ聴かせていただきましたが、まるで別人のように言う単語の全てが、スッと入ってきました。

第一線で活躍し続け、40歳を過ぎてから教わり、ここまで変わったのですから、まさに驚異的な進化です。

1.まず自分の「名前」をしっかり音を動かし、主張する

私が初めに教わったのが、自分の名前を主張するということでした。

自分が1番認識しやすいのは自分の名前や出身地だからです。

ですが、やってみるとこれが出来ない。

 

音を動かすためには日本語にある「アクセント」を利用します。

平板なら2音目、頭高なら1音目、中高なら始めとその後に、上がる音と落ちる音で、しっかりと変化をつける必要があります。

そして、低い音と高い音の差があればあるほど、聴く人の耳にしっかりと残り、聴こえてくるのです。

ですが、実際にこれをやると、まさに「やる」という意識が加わり、その途端に音の動きが極端に狭くなってしまうのが、分かると思います。

まずは自分の名字と名前のアクセントをしっかりと確認して、しっかりと音を動かすことを意識しましょう。

 

名字と名前はしっかりと区切ること、意識して。

それを繰り返せば、意識せずとも名字と名前をそれぞれ別の認識として、分けて言えるようになります。

2.発声練習を利用して、音を動かし、単語で切り、主張する

次のステップとしては具体的な題材、発声及び滑舌練習を用いて行います。

私の場合、初めのうちは外郎売なども練習していましたが、専門学校から悪い意味で「読み慣れている題材」ですので、途中から辞めました。

今はひたすら、次に載せる題材だけに絞って、日々、色々なことを同時並行で取り組んでいます。

意識する点は以下。

始めは極限までゆっくりで構いません。

  • アクセントを意識し、音をしっかりと動かす。
  • 1音1音、母音をしっかりと意識する。
  • 低い音から高い音、高い音から低い音、これをしっかりと意識。
  • 基本は高い所から低いところへ。
  • 単語毎(助詞の部分)でしっかりと区切る、終わらせてから次の単語を言う。

 

ア行

青い家 相生 葵瓜 野葵 家葵 青嵐 老鶯 絵扇

絵団扇 威勢のいい医者 上野から魚河岸まで 絵姿になる江差追分

蝦夷で暮らすも一生江戸で暮らすも一生 縁は異なもの 恩愛の縁

老いては負うた子に教えられ 鵜が鮎を追い合う

 

カ行

貨客船の旅客 中小商工業振興会議 乗客の訓練 栗の木の切り口

規格価格か駆引価格か 危険区域 区画計画 第五交響曲に観客驚愕

 

カ゜行

山羊 兎 葱 雅楽「青海波」 義歯 義眼 義手 義足

生米生麦生卵 赤巻紙黄巻紙長巻紙 呉越同舟とは言語道断 家具

夜具 身ぐるみ 荷車

 

サ行

親切診察室視察 佐賀の佐々木三郎 最新式写真撮影法 佐山の佐々佐吉

生産者の申請書審査 行政監察査察使 親切な先生 背の低い生徒

粗品粗酒粗食 瀕死の死者 消息筋の推察 必死の疾走 左社総評

右社の主義思想

 

ザ行

肘 匙 地面 座頭のざんげ 座右の銘 前述の事情 漸次増税

前夜の風 自費自弁 自業自得 頭脳明晰 絶対絶命

 

タ行

竹垣に竹立てかける 暖かくなる高曇りの天気 地質学的知識の塵

狐 鶴 燕 国鉄 鉄橋 転轍手 不特定投資匿名組合取り締まり

ダ行

道路 道具 大学代表者 第一回議題 電報打電 電話連絡

鼓と小包を一包みにして小包で出した

 

ナ行

親に似ぬ子は鬼子 練絹に平絹 西隣の庭 殿様の長袴若殿様の小長袴

 

ハ行

是々非々主義 候補者放送 東北地方の特派員 広島の紐で火鉢を縛る

羊皮紙の表紙の批評集 不幸な夫婦は古い服

 

バ行

豆ブギ歌手 赤かび病 病気伝染病予防

 

マ行

右の耳から耳輪を三つ 赤巻紙長巻紙 無理に結んだ結び目六つ

目医者 名刺屋 名士に面識

ヤ行

闇の山 夜半の宿 湯屋の中 ゆず湯の夢 八日の夜の夜回り

夜通しよろよろ

 

ラ行

ラクダのシャツ 暖房 ラジオの団欒 利口 理非理不尽無理

アンリ・ルネ・ルノルマンの流浪者の群 五郎が五両十郎が十両

治療中の旅客 最良の料理

 

ワ行

我が国の俵 私の瓦 私は罠にかかった鰐

 

そして次の段階としては・・・

  • 音が自然に動くようになったら、伝える対象を意識して、伝える
  • 「老鶯(おいうぐいす)」など中高で高音が繋がる部分で、それぞれ別の認識を持つ。⇒老鶯で一語ではなく「老いた/鶯」という認識。
  • 徐々にスピードアップし、普段言っているスピードに近づける⇒実戦で使えるようになる

他にも同時並行で意識すべき部分は探せばいくらでも出てきます。

ベースとなる「単語の認識」と「主張」が出来るようになってから、それに重ねる形でどんどん練習の精度を上げていきましょう。

 

「読む」という意識からは日々の努力でしか、脱することは出来ない

現場の山は違う所にあるのですから、そこに向かうためには一旦、自分がこれまで登って来た山を降りる、すなわち「全て捨てる」ことが必要になってきます。

ですが、それがなかなか難しく、迷った時や自信がない時にはどうしても、これまで自分が登って来た山で培ったことだけにすがりつこうとしてしまいます。

マイク前でも、普段話しているように話せばいいだけなのですが、それが出来れば苦労しませんよね。

もちろん、一握りの「天才」はこれらを意識せずとも、感覚だけでいとも簡単にこなしてしまいます。

だから結局の所、私含めた残り9割9分以上の凡才が生き残るためには「理論」「努力」「継続」しかありません。

 

ですが、一度これを身につけることが出来れば、抜群の安定感を得ることができ、単語がしっかりと耳に残るため、あまり芝居を知らない、事務所関係者、音響監督、視聴者の「良く分からないけど、何かいい」という評価に繋がります。

一瞬の些細な違いのように感じますが、これこそが、セリフを「読む人」と「話す人」における圧倒的な差になります。

実際に一線で活躍している方の芝居を聴いてみると、雰囲気ではなく、しっかりと全ての単語をちゃんと言っています。

 

私自身これらを意識し取り組むようになって半年経ち、ようやく最近、そういった部分が何となく分かってきました。

ですがまだまだなので、今後も単語を言う意識は忘れず、聴く人の「何か良い」を求めて精進します。


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